出戻り博士と社会人博士 メリットとデメリット 経験談有
博士前期過程を経て新卒で就職後、「大学の研究の方が楽しかったな」、「企業にいながらドクター取得できるならしたいな」なんて考えたことがある人がいるのではないでしょうか。
そんな人達のキャリアパスとしては以下の3つの選択があります。
- 思い切って会社を辞めて大学に戻る
- 企業内で成果を出してドクター取得の機会を獲得する
- モヤモヤしながら現状維持
少なくとも3. にはなりたくないですよね。
この中で私は1. の選択をした人間な訳ですが、過去に社会人ドクターの人との巡り合わせが多く色んな経験談を聞きました。
そこで今回は社会人ドクターと出戻りドクターのそれぞれのメリット・デメリットを経験を元に書きたいと思います。
社会人ドクターのメリット
・生活費を確保して通学できる
なんと言っても社会人ドクターの良い点は給料をもらいながら大学に通うことができる点です。さらに、学費も会社負担してくれるところもあるそうです。
・会社の研究を引き継げる(いわゆる論文博士)
会社で続けている研究をそのまま大学に持ち込めることが多く論文投稿などの修了ノルマを達成しやすいです。特に社会人ドクターの受け入れに慣れている大学では融通が利いてほとんど大学に行かなくてもドクター取得できちゃったりもします。
※最近は論博の廃止を進めている大学もあるのでお勧めはしません。
社会人ドクターのデメリット
実は社会人ドクターにはデメリットがいっぱいあります。
・研究テーマ選択に制限がある
企業に所属してるので、企業にとって将来利益になる技術を学ぶ必要があります。そのため、自分の興味だけでは研究ができません。なので、大学に通っていますがアカデミックな研究に打ち込むのではなく利益も考えないといけないので自由度が低くなります。
・会社業務と研究の両立が大変
社会人ドクターはただ大学で研究に専念するだけでなく、会社に進捗報告や適宜雑務処理が入ります。一方、大学でも少ないですが授業があり、その課題がかなりヘビーです。これらを両立させるのは極めて多忙です。加えて、大学通学中は残業という概念がないのでどれだけ仕事や研究をしても基本給に上乗せはありません。
・会社都合で中途退学させられることがある
社内人手不足や戦略変更により大学で研究している暇や意味がなくなり会社に引き戻される場合があります。私の知り合いにもせっかく京都大学で研究していたのに会社都合で中途退学しドクター取得に至らなかった人がいました。
出戻りドクターのメリット
・自由にやりたい研究に打ち込める
会社も辞めているのでいわゆる「ただの学生」になります。そのため、自由にやりたい研究に打ち込むことができます。元々やりたい研究があってドクター進学してる訳ですから企業という枷がなくなり羽を広げて研究ができます。こんなに楽しいことはありませんよね。
・自分達の研究のアウトプット先がイメージしやすい
学生の頃は社会にどう役に立つかわからない研究を黙々としていたという人もいると思います。しかし、就職して技術がどのように社会に使われているか理解した上でアカデミックな研究をすると社会実装までのビジョンが視えるのでよりモチベーションが上がります。
・ドクター進学支援の充実化
一昔前では俗に言う学振しかほぼ助成金はありませんでしたが、近年ドクター進学者を増やすために多くの助成金プログラムが用意されています。また、学費が免除になることも多いため最低限の生活は送ることができます。
出戻りドクターのデメリット
・助成金が必ずもらえるわけではない
メリットで助成金があると言いましたが、もちろんこれが全員もらえると言うわけではありません。自分の研究有用性や過去の実績を示し、それなりの倍率の選考を勝ち抜ける必要があります。もし、採用されなかった場合は無賃になるのでそこが少しリスキーですね。
・同年代より遊ぶ時間とお金が少ない
同年代は社会人として働いているので収入は自ずと劣ります。また、研究や論文作成で多忙を極めるため遊ぶ時間もあまりありません。なので、ドクター進学にはそれなりの覚悟は必要となりますね。
いかがでしたでしょうか。
この記事をドクター進学に興味がある人の参考にしてもらえたらと思います。